パリの東から

無視されたフェルマータ(バッハ「無伴奏チェロ組曲」)
「無視された」シリーズもこれで何回目であろうか?よくもまあネタが尽きないものだ。今回は(できれば最終回であってほしいが)いくつかの組曲に見られるフェルマータである。

本っっっ当に心底理解できないのだが、なんでこんなに無視して平気なんだろう?「無伴奏チェロ組曲」は呪われているのだろうか?これが例えばベートーヴェンの交響曲だったりしたら、フェルマータがあるかないかで大騒ぎになると思うのだが。

もう一度言わせてもらうが、バッハ「無伴奏チェロ組曲」の出版譜は100年遅れている。いや200年かもしれない。ヘンレ版やウィーン原典版など、無視された重弦の3つ続きの重弦を1824年のパリ初版本と同じように書いて済ましているのだから。アマチュア・ヴァイオリニストであったヴェルナー・イッキング氏の方が正しく表記しているのだ。


「無伴奏チェロ組曲」の「無視されたフェルマータ」とは、

1、第1番、第2メヌエットの最後の音(G)。

2、第1番、ジーグの最後の音(G)。

3、第5番、第2ガヴォットの最後から2番目の音(C)

4、第6番、第2ガヴォット第4小節の音(D)(大部分の楽譜は、最初の4小節を最後にもう一度書いて24小節になっているが、本来第2ガヴォットは20小節である)。

の4つの音にかかるフェルマータのことである。

この内と2と4は、ケルナーとアンナ・マグダレーナの両方の筆写譜に見られる。
1と3とはアンナ・マグダレーナの筆写譜のみに見られるが、3に関してはケルナーの筆写譜の質の悪い白黒のファクシミリではかすれていて確認できない。

これら4つのフェルマータは伝統的な出版譜ではほとんど無視されて来たのである。まず19世紀の楽譜は確認できるものに限っては壊滅状態。20世紀も(ただし終わりの方はわからない)ほぼ壊滅状態に近い。

4つの内、2は「無視された半小節」に深く関わるもので、そちらで述べたので見てほしい。

あとはすべて第1と第2のある舞曲の、第2から第1へのダ・カーポの前のフェルマータである。

1のフェルマータでは、やはりここでひと呼吸置いてから第1メヌエットに戻るのがいいだろう。4に関しては、ここで第2ガヴォットは終わりの意味でもあるが、もちろんひと呼吸置いた方がいいだろう。

さて3に関しては、繰り返しの後第1ガヴォットにダ・カーポで戻る前は、この音だけを伸ばして最後の低いC音は弾かないという意味である。一体どれだけの演奏者がこのフェルマータを守っているだろうか?いや、そもそも楽譜に書いていないのだから守りようもないだろうが、フェルマータを守って弾くとこの美しい第2ガヴォットの余韻が心に残り、実に魅力的である。

5 gavotte AMB

ぜひお試しを。

余談だが、どうもこのガヴォットは速く弾かれ過ぎているように思う。突進するような音楽ではないと思うのだが。せっかくのこの哀愁のある曲が台無しになっているように思う。

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バッハ「無伴奏チェロ組曲」まとめ


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  1. 2013/02/22(金) 00:21:36|
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