パリの東から

バッハ「無伴奏チェロ組曲」第3番について
~B♭か、Cか?~

第3番は比較的問題が少ないようだが、サラバンドの第7小節の2拍目最後の16分音符は昔から意見の分かれるところである。昔も昔、何しろバッハの生きていた時から(!)である。ある意味「無伴奏チェロ組曲」で最も意見の分かれる音であるかもしれない。

ここはアンナ・マグダレーナははっきりとBを書いているが(ただし♭は書かれていない)、ケルナーは音符の位置はまぎれもなくBでありながら、加線が付いているのである。

アンナ・マグダレーナ
3 Sarabande AMB

ケルナー
3 Sarabande Kellner

兄弟のようなC資料とD資料の間でも意見が分かれていて、C資料はC、D資料はB♭を採用している。ヴェンツィンガー版など出版譜の多くはCだが、アレクザニアン、フルニエ、トルトゥリエなど、アンナ・マグダレーナを尊重してB♭にしている楽譜もある。

これはおそらくバッハ自身はB(♭)を書いたのだろう。しかしながら、B♭と次のE♭の4度の跳躍がやや特異に感じられるため、Cの書き間違いではないかと考え、ケルナーは後から加線を付け加えたのだと思う。C、D資料の違いに関しては、両者の親資料である仮説上のG資料はBになっていたのだが、D資料はそれをそのまま写したが、C資料ではやはり4度跳躍を不自然に思って、Cにしたのではないかと思う。

この4度跳躍は確かにやや特異ではあるが、それゆえに美しいと思う。Cだとなめらかではあるが、和音の移り変わりが早すぎるのだ。それに旋律的に考えて、1拍目と2拍目の終わりの音が共にCになるのは非常に野暮ったく、凡庸である。B(♭)ならば、1拍目の16分音符のB♭-Cと2拍目のA-B(♭)が対になっていることが分かり、明快である。

また和声的には、ここは単純に1拍1和音と考えればいいと思う。つまり1拍目はC#-G-A(ドミナント7の和音の第1転回形)、2拍目はD-G-B♭(四六の和音)、3拍目はD-F#-E♭(ドミナント9の和音)である。つまり2拍目真ん中のAは単なる刺繍音というわけである。


続く

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  1. 2014/04/26(土) 19:13:19|
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