パリの東から

無視されたアラブレーヴェ(¢)
~バッハの無伴奏チェロ組曲の拍子記号について~

無伴奏チェロ組曲の拍子記号については、2つの重要な筆写譜であるアンナ・マグダレーナ・バッハとケルナーの筆写譜は完全に一致している(第2メヌエット、第2ガヴォットなどにおける、わずかな表記の違いは別にして)。参考資料(IMSLP)

にもかかわらず、最初の出版譜(パリ、1824年ごろ)以来、この曲の拍子記号、とりわけプレリュードとアルマンドにおいては上記の筆写譜の指示がことごとく無視されてきた。

プレリュードとアルマンドの上記の2つの筆写譜における拍子記号を、第1番から順に記すと、

プレリュード

1番、c (4分の4拍子)
2番、3/4
3番、3/4
4番、¢ (アラブレーヴェ、2分の2拍子)
5番、¢
6番、12/8

アルマンド

1番、¢
2番、c
3番、c
4番、¢
5番、¢
6番、c

となる。

ところが1879年の旧バッハ全集版では、プレリュードとアルマンドのすべての"¢"(アラブレーヴェ、2分の2拍子)が無視され、"c"すなわち4分の4拍子となっており、それ以来ほとんどの出版譜がそれに倣って、プレリュードとアルマンドを4分の4拍子で塗りつぶしてしまっている。

2分の2拍子と4分の4拍子では、音楽の感じ方が違うし、当然テンポにも影響してくる。それをバッハははっきりと書き分けているのに、どうしてこれまで無視されてきたのか、正直理解に苦しむのである。

これら以前の版でバッハの無伴奏チェロ組曲を弾いていらっしゃる方は、"c"に縦棒を書き加えるようにおすすめします。

追記

今日楽譜屋に行って最近の版について調べてみましたが、さすがに新しい版、ヘンレ(2007年)、ウィーン原典(2000年)、ブライトコプフ(2000年)、また新しくはないけど、ペータース(1965年)ではこれらの点が改められていました。ショット(1966年)も1番のアルマンド以外は改められていました。

しかし前の記事で取り上げた「無視された半小節」については、すべての版が相変わらず無視し続けていました。

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バッハ「無伴奏チェロ組曲」まとめ


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テーマ:チェロ - ジャンル:音楽

  1. 2010/09/03(金) 15:21:37|
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