パリの東から

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なぜ誰も重弦で弾かないのか?
~「無視された重弦」追記~

バッハ「無伴奏チェロ組曲」第1番プレリュードの、第33小節3拍目から第36小節2拍目までの重弦については「無視された重弦」で既に述べた。

この二重符尾(一つの符頭から上下に2つの符尾が伸びている)は100%バッハが書いたものであり、100%間違いなく重弦を意味しているにもかかわらず、この200年近くの間、ぼくが世界で最初に気づくまで、一度も重弦で弾かれたことがない、と言っても信じてもらえないかもしれない。

ケルナー
1 Prelude ds Kellner

アンナ・マグダレーナ
1 Prelude ds AMB

C資料
1 Prelude ds C

D資料
Double stop D


まず100%バッハが書いたと言うのは、4つの筆写譜がすべて書いていることから間違いなく、また100%重弦を意味していると言うのは、議論以前の、弦楽器の記譜上の常識 なのである。

だがこの常識がチェリストには通じない。これは重弦ではなく、単にD線とA線を交互に弾く事を意味するというのである。このような非常識がまかり通ってしまっているのがチェロの世界なのである。

おそらく、ぼくの推測だが、この重弦があまりに強烈なので、古典派やロマン派(及び現代)のヤワな耳には付いて行けなかったからではないだろうか、と思っている今日この頃である。

もう一度言うが、この重弦が始まるのが、第33小節の3拍目であり、それが12拍、つまりちょうど3小節分続き、さらに、最初のところは3つ続きの重弦であるという「3尽くし」が偶然のはずはなく、バッハがこの重弦によって神の栄光を表していることは間違いない。

ところが驚くことにこの重弦をちゃんと書いた出版譜は、この曲の歴史上、ヴェルナー・イッキング氏の楽譜とぼくの楽譜しかないのである(どちらも無料楽譜サイトIMSLPで見れる)。ヘンレ版は2000年の初版ではちゃんと書いていたのに、2007年の第二版では初めの3つ続きの重弦をやめるという改悪を行っている。

イッキング氏はドイツのアマチュア・ヴァイオリニストで、ぼくと同様、インターネットで自分の作った楽譜を配布していた人である。もはや既存の楽譜出版社はその存在意味を失いつつあるのだろうか。ヘンレ版の改悪は、ぼくにはその象徴のように思える。

なぜなら、最良の資料が自宅にいながら利用できる時代になったので、ある曲の原典版を作ろうと思えば、世界中の研究家(専門家だろうとアマチュアだろうと)が、インターネットを通じて議論しながら作れるからである。


何にせよ、百聞は一見にしかず、と言おうか、一度この重弦をお弾きになっていただきたい。当然なのだが、この重弦を弾いて初めて、このプレリュードの本来の姿が現れて来るのである。


<関連記事>

バッハ「無伴奏チェロ組曲」まとめ


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  1. 2014/08/05(火) 08:43:57|
  2. 無伴奏チェロ組曲
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント
大変興味深く拝読しました。

さて、重弦での演奏は、ご指摘の通りなかなか見当たらないようですので、差し支えなければ、(私のようにセロが弾けない人間のためにも)重弦で演奏された音源をアップしていただけると大変嬉しく思います。

是非、ご検討ください。
  1. 2017/04/02(日) 16:01:04 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]
コメントありがとうございます。
今のところ重弦で弾いている演奏を聴いたことがありません。もちろんぼくが弾いて録音すればいいことですが、ぼくの現在の技量ではまだお聞かせできるほどの演奏はできません。しかし数年以内に録音したいとは思っています。
  1. 2017/04/19(水) 20:15:33 |
  2. URL |
  3. Shin-Itchiro #-
  4. [ 編集]

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