パリの東から

神を讃えるプレリュード
~無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードに隠された数字~

バッハが数字好きなのはよく知られていて、それをテーマにした本もあるくらいだ。

無伴奏チェロ組曲にも何か秘密の数字が隠されていないだろうか。

とりわけそのオープニング曲ともなると、バッハが何か「仕掛けた」可能性がないとは言い切れないだろう。

楽譜をお持ちの方は(お持ちでない方はこちらを)まずこのプレリュードの小節数を見て欲しい。そしてその数にピンと来た方は、以下は読まずに自分でこのプレリュードを調べてほしい。せっかくの謎解きの楽しみを奪うわけには行かないから。

















さてその数字は、、、

















42である。


42とは何か?何かの倍数ではないか?

そう、7x6である。

7はキリスト教では完全な数字であるという。神は6日間で世界を作り、7日目に休まれたから。


でも他には?


「バッハの数字」は既によく知られている。

BACHをアルファベットの順番の数字に置き換えると、B=2、A=1、C=3、H=8 で、全部を足すと14になるわけで、バッハはこの数字を大変好んだ。

例えば「平均律クラヴィーア曲集第1巻」の1番(ハ長調)のフーガのテーマは14の音で出来ている(タイで結ばれている2つの音符は1つと考える)。

Fuge 1-1 sujet 2


さてそれでは「無伴奏チェロ組曲」の場合は、、、


そう、14x3=42である。

3はキリスト教では「三位一体」ということから神を表す。

これはつまり、このプレリュードで「バッハ(14)が神(3)の栄光を讃えている」ことを意味する、と言って間違いないだろう。

そしてさらに驚嘆すべきことなのだが、チェリストであれ、びよりすとであれ、ギター、サックス、リコーダー、トロンボーン、コントラバス、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者であれ、この曲を演奏する人は全て、あるいは演奏はしないがこの曲を愛する人は全て、ここから先を読む前にご自身でこの曲の構造を研究してみてほしい。

















気づかれたことと思うが、このプレリュードは、


実際に14小節x3で出来ていたのである。

つまりこのプレリュードは単に42小節でできているだけではなく、14小節のブロック3つによって組み立てられていたのである

そして第3部分は別として、前の第1部分と第2部分はそれぞれ7小節づつの2つの部分に分かれるのである。

7(完全な数字)x2=14(バッハの数字)である。


そしてそれとはまた別に、全体はフェルマータによって完全に2つの部分にも分けられている(フェルマータは小節の中ほどにあるように見えるが、実際には下の楽譜の下段に見られるように和音全体にかかっているのであり、それが単にアルペッジョになっているだけである)。

実に驚くべき構成である。


楽譜で示してみる。
より把握しやすいように、上段に元の楽譜(小さいが)を、下段にそれを和声に要約したものを示しておく。

Bach 1st Cello Suite Calendar
(The Structure of the Prélude from the 1st Cello Suite of J.S. Bach by Yokoyama Shin-Itchiro)

そして第3の部分については「無視された重弦」の記事に書いた(記事の下の方)。

ここでバッハは3という数字を並べに並べて神の栄光を讃えているのである。この重弦を弾かないことはバッハの意図に反することになる。

この重弦そしてこのプレリュードは「無伴奏チェロ組曲」のグローリアなのである。


追記

最近この表を「カレンダー」と呼びたいと思っている。またバッハは上に書いたように、神が6日間で世界を創り、7日目に休んだことから、このプレリュードで天地創造を表現しようとしたのかもしれない。


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テーマ:チェロ - ジャンル:音楽

  1. 2014/05/22(木) 07:22:00|
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バッハ「無伴奏チェロ組曲」第4番について
バッハ「無伴奏チェロ組曲」第4番の最大の問題、プレリュードの「早すぎたフラット」については別記事に書いた。ここではその他の問題に触れよう。


~ダブルかシングルか~

同じくプレリュードの第80小節の後半、4つのBの音があるが、これらはすべてダブルフラットである。ごく一部ではあるが、アレクザニアン、トルトゥリエなど、これをシングルフラットとする楽譜があり、またそのように弾くチェリストが時々いるので注意を促しておく。

彼らの理屈によると、フラットが一つしか書かれていないからというのだが、実はこのころはまだ今日のようなフラット記号を2つ並べるダブルフラットの記号はなかったようである(少なくともバッハは使用していなかった)。

「平均律クラヴィーア曲集」第1巻に面白い例がある。8番のプレリュードは変ホ短調(フラットが6つ)で、第26小節にダブルフラットのB音が2つ出てくるのであるが、バッハの自筆譜を見ると、そこには最初は小さなフラットが書いてあるだけなのだが、後にやたらと馬鹿でかいフラットで書き直しているのである。

Well Tempered 1-8

たださらに興味深いのだが、この馬鹿でかいフラットの下に隠れている記号をよくよく見ると、ただのフラットではなく、膨らみの部分が少しくびれているようなのである。これはバッハが考案した記号なのだろうか?しかしこれでは他人にはシングルフラットとあまり区別がつかないので、後にこの馬鹿でかフラットに書き換えたのだろう。

(追記
訂正します。この手稿譜はアンナ・マグダレーナのものでした。ですからくびれたフラットをアンナ・マグダレーナは知っていたわけです。しかし上から馬鹿でかフラットを書いたのは多分バッハではないかと思いますが確証はありません。)

さて「無伴奏チェロ」の方だが、バッハ自身はこのくびれたフラットを書いていたかもしれないが、ケルナーとアンナ・マグダレーナの筆写譜を見る限りその形跡はない。

ケルナー
4 Prelude Kellner double b color

アンナ・マグダレーナ
4 Prelude AMB double b color

しかしいずれにせよ、もしここがシングルフラットなら、わざわざここにフラットを書く必要がないのだ。もともとB♭なのだから。ここは調号のフラット、プラス臨時記号のフラットで、ダブルフラットと考えて良い。1+1=2というわけである。

またもしB♭であることを注意するためのフラットであるならば3度も書く必要はないということも言っておこう。

そもそもここはナポリの6度(トニックの完全4度上の音の上に付けられた短3度音と短6度音による和音。言い換えると、トニックの短2度上の音を根音とする長三和音の第1転回形)の場所であるが、シングルフラットではそのせっかくのナポリの6度の効果が薄れてしまう。変へ長調という普通ありえない遠い調に迷い込んだのち、トニックである変ホ長調に戻って来るからこそ、その安堵感を味わえるというのに、変ヘ長調を象徴するBダブルフラットを聞かせなくては何の意味もないのである。


アルマンド

多くの出版譜やチェリストが、第23から第24小節前半にかけての3つのA音にナチュラルを付けているが、4つの筆写譜すべてがここはA♭なのである。これは和音を勘違いしている(多分F7の和音に)からで、勘違いしている和音の方を修正すべきなのに、楽譜の方を修正してしまっているのである。

ここの部分は調がはっきりしないが、その後第25小節でト短調であることが明らかになる。するとここの和音はト短調のナポリの6度の和音(また!)であることが分かるのである。楽譜で示してみよう。

4 Allemande Ab

旋律しかないところで、低音を補ってナポリの6度であることを理解するのは、弾く方にとっても聴く方にとっても想像力を必要とするだろう。しかしもうここでA♮を弾く愚は終わらせてほしい。

続く

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  1. 2014/05/07(水) 04:16:10|
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