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バッハ「無伴奏チェロ組曲」正誤表
この記事はブログ分館「バッハ 無伴奏チェロ組曲、校訂者注記」に移動しました。
http://bachmubansou.blogspot.fr/p/blog-page_12.html


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  1. 2013/03/31(日) 21:43:18|
  2. 無伴奏チェロ組曲
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バッハ「無伴奏チェロ組曲」第6番について
第6番の最大の問題「無視されたシャープ」については別記事として書いた。まだ読んでいない人はまずはそちらを読んでいただきたい。

ここではその他の問題を取り扱うことにする。

(バッハ「無伴奏チェロ組曲」第6番の横山版はこちら

プレリュード
、第91小節、これはぼく自身もうっかり見逃してしまっていたのだが、最後の音はAではなくG(ト長調版では、DではなくC)である。つまりここでドミナント7の和音になって、次のDの和音へと流れ込んで行くのである。このG音は次の小節の2拍目の最後の音F#に、1オクターヴ低くではあるが解決される(下のアンナ・マグダレーナの筆写譜の右端の音)。

ここは4つの筆写譜すべてがGであるのだが、パリ初版譜が前の小節と同じAにして以来、ドッツァウアー、旧バッハ全集と引き継がれ、悪い習慣がはびこってしまった。

アンナ・マグダレーナ、初めはアルト記号であることに注意
6 Prelude AMB

ケルナー
6 Prelude 91 Kellner

C資料(D資料も同じ)
6 Prelude 91 C

それにしても何と新鮮で素晴らしい響きであることか!これよりも美しいドミナントの7度音を他に知らない。少し強調して弾くとよいだろう。

このGを採用しているのは今まで調べた限り、横山版の他はヘンレ版のみである。4つの筆写譜すべてがGを記しており、また音楽的にも自然で美しいこのGを、たまたまパリ初版譜が勘違いか凡ミスでAにして以来、全く修正しないで今日まで放っておいたとは、何という怠慢であろうか。

追記

バズレール版もGになっていました。バズレール(Paul Bazelaire, 1886–1958)は20世紀前半のフランスを代表するチェリスト。


サラバンド
、これは「勘違いされたスラー」とでも言おうか。第29小節、アンナ・マグダレーナの筆写譜では、1拍目(2分の3拍子なので1拍は2分音符)の最後の16分音符と、2拍目の始めの4分音符はタイで結ばれている。

6 Sarabande AMB 3

このスラーは、1拍目の後半のE-F#-Gの3つの音にかかるものが後ろにずれて書かれたのだと思われて来たが、実はずれてはおらず(ただし音符から離れてはいるが)、上記のとおり1拍目と2拍目を結ぶタイなのである。バスが1拍目と3拍目にしかないことから分かるが、2拍目はこの小節では弱拍であり、ここでGの音を2つに分ける必然性はないのである。サラバンドは基本的に2拍目は強拍であるが、いつもそうとは限らないのである。

このようなシンコペーションが不自然だというなら、かの「G線上のアリア」(管弦楽組曲第3番、第2曲)にそっくりな例があることを思い出してみよう(終りから2小節目)。音価は半分になっているが、調もニ長調で同じだし、E-F#-Gという音の並びも同じである。(楽譜はト音記号)

Aria 2

ロストロポーヴィッチはビデオでこのタイを付けている。この曲の本来の性格とは違う演奏だとは思うが、このタイを見逃さないとは、さすがはロストロポーヴィッチである。

サラバンドは3分30秒から。問題の箇所は6分あたり



ジーグ、第18小節後半、主題がニ長調からイ長調に移って2回目の登場をするところであるが、ヘンレ版、ウィーン原典版など最近の版はどういうわけか、ここをアンナ・マグダレーナおよびC、D資料に従って8分音符3つの形を選んでいる。

アンナ・マグダレーナ
6 Gigue AMB

しかしこれはおそらくアンナ・マグダレーナのミスであろう。この形はあまりにも貧しく、また不自然であり、ケルナーの音形、すなわち主題の1回目の登場と同じ形からわざわざこのようなマイナスの方への改訂をするとはとても思われないのだ。

ケルナー
6 Gigue Kellner

多分この場合小節後半を記憶して書き写したのだろうが、その際小節前半のリズムにつられて記憶が変形してしまったのだとぼくは推測している。

CおよびD資料がアンナ・マグダレーナと同じであることはアンナ・マグダレーナを正当化する役には立たない。C、D資料はアンナ・マグダレーナ系統の資料だからである。つまりここではケルナーとアンナ・マグダレーナの2つの資料の相違があるだけである。この点からも資料の系統を正しく知ることは重要である。

続く

<関連記事>

無視されたシャープ(無伴奏チェロ組曲第6番、ガヴォット)
バッハ「無伴奏チェロ組曲」第6番、ト長調版について

バッハ「無伴奏チェロ組曲」まとめ


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  1. 2013/03/08(金) 19:56:33|
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新ベーレンライター原典版のバッハ「無伴奏チェロ組曲」について
パリのど真ん中、レ・アールにある音楽図書館で「無伴奏チェロ組曲」をいろいろ借りて来た。ジャクリーヌ・デュプレ版など、意外に興味深い版が置いてあったが、全部借りてしまうと他の人が困るだろうから、ヘンレ版、マルケヴィッチ版、新ベーレンライター原典版の3つに絞った。(ちなみにマルケヴィッチ版とは指揮者イーゴリ・マルケヴィッチの弟、ディミトリー・マルケヴィッチによる個性的な版。第4版まで出たようだが、ぼくが借りたのは初版。)

さて新ベーレンライター原典版については「出版譜について」でも少し述べたのだが、単独の記事にした方がいいと思ったのである。

まずは整理しておこう。ベーレンライター社からは3種類の「無伴奏チェロ組曲」が出ているので混乱しているのだ。

1、アウグスト・ヴェンツィンガー版(1950年)

これは日本語版も出ていて、おなじみである。20世紀に出た出版譜の中で最もスタンダードなものと言って良いだろう。ぼくも出版譜の中から一つ選んで下さいと言われれば、新しい出版譜にこれと言ったものがないので、この版にせざるを得ない。

よく間違われるのだが、これは旧バッハ全集とも新バッハ全集とも関係がない、独立した版である。Amazonでも間違えている

2、新バッハ全集版(ハンス・エプシュタイン編集/1988年)

これが本当の新バッハ全集版なのだが、これは実はほとんど人目に触れることがない、気の毒な版である。新バッハ全集の一部として、音楽大学の図書館の本棚の飾りになっているはずで、個人で持っている人はめったにいないだろう。

アンナ・マグダレーナとケルナーの筆写譜に基づく第1の楽譜と、C資料とD資料に基づく第2の楽譜が一冊(大型版)に収められており、それと別冊の、4つの筆写譜のファクシミリを含んだ校訂報告(小型版)がある。参考→ベーレンライター社のページ

なお、ハンス・エプシュタイン(1911-2008)はドイツ生まれのスウェーデンの音楽学者。→ウィキペディア記事(スウェーデン語)

3、新ベーレンライター原典版(SchwemerおよびWoodfull-Harris編集/2000年)

こちらはかなり知られている。この記事で扱うのはこれである。上記の新バッハ全集の成果をもちろん取り入れてはいるだろうが、別のものである。4つの筆写譜とパリ初版譜がそれぞれ別冊になっている。それに解説と、5つの資料の違いがわかるようになっているスラーなし楽譜がセットになっている。高価ではあるが、日本でも持っている人がある程度はいるようである。

(追記

2016年11月に新バッハ全集改訂版のチェロ組曲が出版された。これもベーレンライターから出ているので、これで4冊目となる。これについてはブログ分館「バッハ 無伴奏チェロ組曲、校訂者注記」に書いたので、ご覧いただきたい。→ 新バッハ全集改訂版の「無伴奏チェロ組曲」

4つの資料を出版したのは画期的である。これはいくら称賛してもし切れない。パリ初版譜もそれ自体は興味深いものである。

問題はスラーなし楽譜である。このアイデア自身は良い。うまく作られていればそれはそれで研究の役には立つだろう(演奏には使えそうにないが)。しかし実際にはこれはあまりに問題が多く、まともな研究には役立たない。修正を加えたものをベーレンライター社に送ろうかと考えている。

まず何が問題かと言って、パリ初版譜があまりに優遇されていることである。スラーなし楽譜の前書きには、「明白なミスは除いた」と書いているにもかかわらず、パリ初版譜の明々白々なミスはうんざりするほど掲載している。それでいてアンナ・マグダレーナの重要な記譜(ミスも含めた)はしばしば無視しているのである。

このパリ初版譜はよほどあわてて出版されたのか、まったく校正されなかったようで、ミスだらけなのである。極端な例としては、第6番のプレリュードの第62から66までの5小節が丸々抜け落ちているとか、第4番のクーラントの第47小節の2拍目から次の小節の終わりまでが、なぜか第52小節の2拍目から次の小節の終わりまでと同じになっているとか、ひどい出来なのに、特にこの「明白なミス」である後者をスラーなし楽譜にわざわざ載せているのである。もうお話にならないレベルである。

どうせやるなら、ミスかどうかの判断は利用者に任せて、全ての異稿を掲載すべきだろう。編集者の方で既に取捨選択してあるのでは意味がないのである。全部の異稿を掲載したところで大して楽譜は増えないと思う。

またこの楽譜自体にミスがあるし、「臨時記号1小節1個主義」にもほどがある(お持ちの方は4ページ下から3段目の最初を見て下さい。これで3段に分かれたE、D、C資料の頭の音がC#であることがわかりますか?)。

今すぐ、改訂版を出すか回収するかのどちらかしかない。

それから何回も書いたが、パリ初版譜をE資料などと呼んで4つの筆写譜と同列に扱うのはやめるべきだ。E資料とはパリ初版譜を作る際に利用した資料の方にふさわしい名前である。

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バッハ「無伴奏チェロ組曲」まとめ


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  1. 2013/03/07(木) 13:32:48|
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